自動車整備士資格が2027年に大きく変わる理由【一級の重要性も解説】
2027年1月1日、自動車整備士の資格制度が大きく見直されます。
「今持っている二級ガソリンやジーゼルの資格はどうなるのか」「2027年の改正で何が変わるのか」「これから一級整備士を目指すべきなのか」——そんな疑問や不安を持って、このページにたどり着いた方も多いはずです。
結論から言うと、現行資格者が2027年の制度改正で直ちに資格を失うわけではありません。 ただし、今回の見直しは単なる名称変更ではなく、資格区分の再編、実務経験年数の短縮、電子制御対応の強化、自動運転車に関わる検査員要件の見直しなど、今後の働き方やキャリアに影響する内容が含まれています。特に、2029年4月以降は一級整備士の重要性がこれまで以上に高まるため、今のうちに全体像を正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、現役の鈑金塗装職人兼整備士の視点から、2027年の自動車整備士資格改正について、何が変わるのか・何が変わらないのか・現行資格はどう扱われるのか・一級を目指す意味はどこにあるのかを、できるだけわかりやすく整理します。制度施行日と新試験開始時期の違い、2025年から先行して動いている改正内容、鈑金・車体整備に関わる人が押さえるべきポイントまで、迷いやすい部分をまとめて確認していきましょう。
先に結論を知りたい方へ: 2027年改正で現行資格が一律に無効になるわけではありません。ただし、2029年以降を見据えると一級整備士の価値は確実に高まります。

整備士の資格制度が変わるって聞いたんですが、自分のキャリアにどう影響するのか全然わからなくて…

押さえるべきポイントは「資格区分の再編」「実務経験年数の短縮」「2029年以降の一級の重要性」です。特に鈑金・車体整備に関わる人は、電子制御対応がどう組み込まれるかを理解しておくと、これからの動き方が見えやすくなります。
この記事でわかること
- 制度改正のタイムラインと混同しやすいポイント
- 資格区分が「総合」「二輪」を軸に再編される中身
- 実務経験年数の短縮がいつから・どう変わったか
- 2029年4月以降に一級整備士が重要になる理由
- 現行資格の扱いと、今のうちに考えておきたいこと
なぜ今、整備士資格制度が見直されるのか
背景①:自動車技術の急速な高度化
今回の制度改正の大きな背景にあるのは、自動車技術の進化です。AEB・LKA・ACCといった先進安全技術の普及に加え、HV・EV・FCVの増加によって、整備の現場では電子制御を前提にした知識と技能が求められるようになりました。国土交通省は、こうした変化に対応するため、自動車整備士の資格体系や養成課程の見直しを進めています。
鈑金塗装の現場でも、フロントガラス交換後のカメラエーミングやセンサー周辺部品の取り扱いは、すでに珍しい話ではありません。ボディを触る仕事と電子制御が切り離せなくなっている以上、資格制度の側もそれに合わせて変わっていくのは自然な流れです。
背景②:深刻な整備士不足
もうひとつの大きな背景が、整備士不足です。国土交通省の資料では、自動車整備職種の有効求人倍率は上昇傾向にあり、令和3年度で4.55倍とされています。これは他の同種職種と比べても高い水準で、人材不足が構造的な課題になっていることを示しています。
そのため、業界の入り口を広げる意味でも、「資格取得までの時間が長い」というハードルを下げる必要がありました。今回の改正は、技術の高度化への対応と人材確保を同時に進めるための制度改正だと見ると、全体像が理解しやすくなります。
改正のタイムライン:ここがいちばん混同されやすい

制度改正でいちばん誤解されやすいのが、「施行日」と「新試験の開始時期」は同じではないという点です。
制度の施行日は2027年1月1日ですが、新制度に基づく試験が始まるのはその後です。 二級・三級の新試験は最短で2027年3月、一級の新試験は最短で2028年3月とされています。
さらに注意したいのは、一部の改正がすでに先行して動いていることです。実務経験年数の短縮・オンライン研修講習の解禁・電子点検整備記録簿の解禁は2025年7月8日に施行済みです。一方、スキャンツール等による点検可能範囲の拡大は2025年10月8日施行で、ここは日付を混同しやすいポイントです。自動運行装置を備える自動車の検査員要件強化は、2029年4月1日施行です。
タイムライン早見表
| 内容 | 時期 |
|---|---|
| 制度施行日 | 2027年1月1日 |
| 二級・三級(新制度)の新試験開始 | 2027年3月〜(最短) |
| 一級(新制度)の新試験開始 | 2028年3月〜(最短) |
| 実務経験年数の短縮 | 2025年7月8日〜 |
| オンライン研修・講習の解禁 | 2025年7月8日〜 |
| 電子点検整備記録簿の解禁 | 2025年7月8日〜 |
| スキャンツール等による点検可能範囲の拡大 | 2025年10月8日〜 |
| 自動運転車関係の検査員要件強化 | 2029年4月1日〜 |
変更点①:資格区分の再編(「総合」と「二輪」へ)

現行制度はどうなっているのか
現行制度では、自動車整備士資格は一級・二級・三級・特殊整備士に分かれ、その中でさらに種類が細かく分かれています。現行の一級は「一級大型自動車整備士」「一級小型自動車整備士」「一級二輪自動車整備士」の3種類、二級は「ガソリン・ジーゼル・シャシ・二輪」、三級は「シャシ・ガソリンエンジン・ジーゼルエンジン・二輪」、特殊は「タイヤ・電気装置・車体」です。
ここで注意したいのは、一級を「ガソリン・ジーゼル・シャシ」の区分と説明するのは誤りだということです。ガソリン・ジーゼル・シャシは主に二級・三級の区分であり、現行の一級は大型・小型・二輪です。
2027年以降はどう変わるのか
2027年以降は、この細分化された体系が「総合」と「二輪」を軸とした形に再編されます。「総合」は自動車全般に係る知識・技能を総合的に有する資格として整理される一方、二輪は四輪と比べて構造や必要な技能が異なるため、独立した資格として残す考え方が示されています。
新旧の対応イメージ
| 現行の区分 | 新しい区分 |
|---|---|
| 一級大型自動車整備士/一級小型自動車整備士 | 一級 自動車整備士(総合) |
| 一級二輪自動車整備士 | 一級 自動車整備士(二輪) |
| 二級ガソリン/二級ジーゼル/二級自動車シャシ | 二級 自動車整備士(総合) |
| 二級二輪自動車整備士 | 二級 自動車整備士(二輪) |
| 三級自動車シャシ/三級ガソリンエンジン/三級ジーゼルエンジン | 三級 自動車整備士(総合) |
| 三級二輪自動車整備士 | 三級 自動車整備士(二輪) |
| 自動車電気装置整備士 | 自動車電気・電子制御装置整備士 |
| 自動車車体整備士 | 自動車車体・電子制御装置整備士 |
| 自動車タイヤ整備士 | 自動車タイヤ整備士(変更なし) |
現行の一級は制度上3種類、でも実務上は「一級小型」中心
制度上、現行一級は大型・小型・二輪の3種類です。ただし日整連のFAQでは「一級大型自動車整備士及び一級二輪自動車整備士の試験は行っておりません」と明記されており、実際の受験や合格実績としては一級小型が中心です。
制度解説では「現行一級は3種類」と書くのが法令上は正確ですが、実務感覚に近い説明をするなら「制度上は3種類、現在の試験運用では実質一級小型が中心」と補足しておくのが親切です。
変更点②:鈑金・車体整備に関わる人ほど見逃せない名称変更
特殊整備士の名称変更は、鈑金塗装や車体整備に携わる人にとって特に重要です。現行の「自動車車体整備士」は「自動車車体・電子制御装置整備士」に変わり、「自動車電気装置整備士」は「自動車電気・電子制御装置整備士」に変わります。
これは単なる看板の掛け替えではありません。車体整備や電装整備の分野でも、電子制御装置を前提にした知識・技能が求められることを、資格の名称そのものに明示したという意味があります。特にADASやエーミングに関わる現場では、今後ますますこの流れが強くなると考えておいたほうがいいでしょう。
変更点③:電子制御対応は「全級一律」ではない
「総合」に再編されると聞くと、すべての級で同じレベルの電子制御対応が求められるように感じるかもしれませんが、そこは少し違います。
国土交通省の報告書で電子制御装置に係る整備の知識・技能を特に明示しているのは、一級自動車整備士(総合)と二級自動車整備士(総合)です。さらに特殊整備士では、自動車電気・電子制御装置整備士と自動車車体・電子制御装置整備士に、その要素が組み込まれます。
つまり、「総合への再編=全級が一律に電子制御を同じ深さで扱う」という理解は正確ではありません。電子制御への対応強化は、特に上位資格と電子制御関連の特殊資格で色濃く打ち出されている、という整理が実態に近いです。
変更点④:実務経験年数の大幅短縮

2025年7月8日から先行施行済み
実務経験年数の短縮は、2027年を待たずに2025年7月8日から施行されています。
| 資格区分 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 二級(三級合格後) | 3年 | 2年 |
| 三級 | 1年 | 6か月 |
| 特殊整備士 | 2年 | 1年4か月 |
未経験から二級を目指すときの目安
未経験から二級整備士を目指すルートはいくつかありますが、わかりやすい「三級を取ってから二級へ進む」ルートでは、三級受験資格まで6か月、その後二級の受験資格まで2年なので、合計で約2年6か月がひとつの目安になります。
電気・電子系学科卒業者への緩和は別の改正事項
大学等の電気・電子系学科卒業者にも受験に必要な実務経験年数の短縮を広げる措置は、2025年改正ではなく2022年改正で既に盛り込まれており、同年に即日施行されています。 実務経験年数そのものの短縮とは別の話なので、ここは混同しないようにしておきたいところです。
変更点⑤:2029年から一級整備士の価値がはっきり上がる

今回の改正で、長期的なキャリアへの影響がもっとも大きいのはここです。
2029年4月1日以降、自動運行装置(レベル3・4)を備える自動車が保安基準に適合する旨の証明を行う自動車検査員になるには、従来の要件に加えて一級自動車整備士の技能検定合格が必要になります。
要するに、自動運転関係の車両を扱う検査の現場では、一級の有無がはっきり意味を持つようになるということです。今はまだ「一級まで必要か」と感じている人でも、2029年をひとつの節目として考える価値は十分あります。今後、先進安全技術や自動運転関連の車両が増えるほど、一級の価値は実務上も評価上も上がっていく可能性が高いです。
2029年4月1日の施行時点で、すでに自動運転車の検査を行っている指定事業者については、4年間の経過措置が設けられています。その間は二級の自動車検査員にも引き続き自動運転車の検査を行わせることが認められます。ただし、これはあくまで既存事業者向けの猶予であり、新規に対応を始める事業者や2033年以降は一級資格が必須となります。
一級試験の口述試験は2027年1月1日の施行をもって廃止
あわせて、一級整備士試験そのものにも変化があります。2022年の省令改正公布時に、一級の学科試験における口述試験を廃止し、その要素を実技試験側に含める形に見直すことが決定されました。この規定は2027年1月1日の制度施行をもって正式に廃止されます。現時点(2026年)ではまだ口述試験が実施されていますが、2027年3月以降の新制度試験から口述試験はなくなります。受験を検討している方は、受験時期によって試験方式が変わる点に注意してください。
変更点⑥:教育・運用のデジタル化も進む
2025年改正では、資格制度そのものだけでなく、学び方や記録の残し方もデジタル寄りに変わっています。整備主任者研修、自動車検査員研修、養成施設の学科教育について、オンラインでの実施が可能になりました。
また、点検整備記録簿についても、書面に代えて電磁的記録での作成・保存・交付が可能になりました。現場の事務負担や運用のあり方も、今後は少しずつ変わっていくはずです。
スキャンツール点検の扱い
従来の目視等による点検方法に加えて、スキャンツールを活用した確認方法等も認められるようになりました。ここは「2025年7月に全部変わった」と雑にまとめられがちですが、スキャンツール等による点検可能範囲の拡大の施行日は2025年10月8日です。タイムラインを確認するときは日付の混同に注意してください。
現行資格はどうなる? 今の資格は無駄になるのか
結論から言えば、現行資格者が制度施行によって直ちに資格を失うような改正ではありません。 国土交通省の見直し資料では、既存資格者が新制度下でも上位資格を目指せるスキルアップの仕組みや、養成課程修了者に対する経過措置が示されています。
「今持っている二級ガソリンが2027年に突然なくなる」といった理解は不要です。ただし、新制度の「総合」資格が長期的にどう評価されていくか、そして一級の必要性がどこで高まるかを考えると、現行資格を持っている人ほど「次に何を取るか」を早めに考えておく価値があります。
じゃあ、自分は何をすべきか
この改正は、今すぐ全員が慌てて動かなければいけない話ではありません。ただ、次のどれに当てはまるかで、考えるべきことは変わってきます。
すでに二級を持っている人
まず「今の仕事で電子制御やADASにどこまで関わるか」を整理するとよいです。将来的に検査員や管理職、あるいは先進安全技術対応を強みにしたいなら、一級を視野に入れる意味は大きくなります。特に2029年以降を考えるなら、一級は”取れたら理想”ではなく、”持っていると強い資格”に変わっていきます。
これから三級・二級を目指す人
実務経験年数の短縮が追い風です。以前より早いタイミングで受験資格に届くようになるので、キャリアスタートのハードルは確実に下がっています。とはいえ、「とりあえず取れそうな資格を選ぶ」より、「将来どの分野で食べていくか」から逆算してルートを考えたほうが失敗しにくいです。
鈑金・塗装・車体整備が主戦場の人
車体整備の名称変更が示すとおり、今後はボディ系の現場でも電子制御対応の理解が価値になります。今は作業を分業できていても、将来的には「車体だけ」「塗装だけ」で完結しにくい場面が増える可能性があります。エーミングや関連法規、電子制御まわりの知識を早めに意識しておくことが、差別化にもつながります。
Q&A:2027年整備士資格改正でよくある疑問
Q1. 今持っている「二級ガソリン」の資格は使えなくなりますか?
いいえ、引き続き有効です。 制度改正によって、現行資格者が直ちに資格を失うという整理にはなっていません。国土交通省の資料では、既存資格者向けに新制度下でのスキルアップ経路や経過措置が示されています。
Q2. 未経験から最短でいつ二級整備士が取れますか?
ルートによりますが、三級経由で約2年6か月が目安です。
三級受験資格まで6か月、その後二級受験資格まで2年なので、三級を経由して進む場合の目安がこの期間になります。職場環境や学習スタイルによって最適なルートは異なります。
Q3. なぜ2029年以降に一級整備士が重要と言われるのですか?
自動運行装置(レベル3・4)を備える自動車の検査業務に一級資格が必須となるからです。
2029年4月1日以降、これらの車両の保安基準適合証明を行う自動車検査員には、一級整備士の技能検定合格が求められます。なお、施行日時点ですでに自動運転車の検査を行っている事業者には4年間の経過措置があります。自動運転関係の車両が増えるほど、この要件の重要性は現場で高まります。
Q4. オンラインで講習が受けられるのはいつからですか?
2025年7月8日の改正からです。
整備主任者研修、自動車検査員研修、養成施設の学科教育などの座学部分が対象です。地方在住や業務が忙しい職人でも学習しやすくなっています。
Q5. 新試験はいつから始まりますか?
二級・三級の新試験は最短で2027年3月、一級の新試験は最短で2028年3月です。
制度施行日である2027年1月1日と新試験の開始時期は同じではありません。「2027年1月から新試験が始まる」という情報は不正確なので注意が必要です。
Q6. 一級の口述試験はいつなくなりますか?
2027年1月1日の制度施行をもって廃止されます。
2022年の省令公布時に廃止が決定・明記されていますが、施行は2027年1月1日です。現時点(2026年)ではまだ口述試験が実施されています。2027年3月以降の新制度試験からは口述試験がなくなり、その要素は実技試験に組み込まれる形になります。受験予定の方は最新の日整連情報を確認してください。
まとめ
今回の制度改正を一言でいえば、「電子制御時代の整備士制度への再設計」です。
資格区分は「総合」と「二輪」を軸に整理され、実務経験年数は短縮され、教育や記録もデジタル化が進みます。そして2029年以降は、自動運転関係の検査業務において一級整備士の価値がこれまで以上にはっきりしてきます(既存事業者には4年間の経過措置あり)。
一方で、現行資格者が制度施行でいきなり不利になるわけではありません。今持っている資格を土台にしながら、次に何を積み上げるかを考えればいい話です。焦る必要はありませんが、先送りにしすぎると「気づいたら一級の有無が評価差になっていた」ということも起こり得ます。
今回の改正は、資格を守るための話というより、自分のキャリアをどう設計するかを見直すきっかけです。 特に二級保有者や、これから鈑金・車体・先進安全技術対応の分野で長く働きたい人は、2029年をひとつの節目として、一級も含めた道筋を考えておくと動きやすくなります。

変更点が多くて複雑に見えましたが、整理してもらったおかげで自分に関係する部分がわかりました。

「電子制御への対応強化」と「一級の価値向上」という2本柱で読むと、あとはシンプルです。資格は道具。制度が変わるタイミングは、自分のキャリアを棚卸しする絶好の機会でもあります。焦らず、でも早めに動いておくのが正解です。

